咳喘息(おもに成人の方を対象にします)

成人の方で、いつまでも“せき”だけが続く…これってホントに風邪?

風邪やインフルエンザ、新型コロナにかかった場合など、発熱や頭痛は治ったのに「せき」だけがいつまでも残る…こんな経験はありませんか。

目安となる期間は「3週間」です。

  1. 風邪の諸症状の中で、「せき」は比較的長引きやすい印象があります。
    A.日本呼吸器学会がまとめたガイドライン「咳嗽・喀痰(がいそう・かくたん)の診療ガイドライン2019」では、「3週間以上」せきが続くようなら、風邪、感染症以外の病気を疑うべきだとしています。
  2. ここで問題にしているせきって、どのようなタイプがあるのでしょう?
    A. あまりたんが絡まないドライなせきや、たんを伴うウエットなせきがあります。より正確に診断するためには、「生活背景の聞き取り」が求められるところです。具体的には、アレルギーや喫煙習慣の有無などですね。「せきが続く期間」だけを診ていても、正確な診断は下せません。
    せきという結果は一つでも、原因はさまざまに考えられる

 

  1. せきが長引いている場合、考えられる病気は?
    A. まさに多彩です。ちなみに、せきのことを医学的には「咳嗽(がいそう)」と言います。そのうえで、主だったせきの続く病気には、以下のようなものがあります。
    ・感染性咳嗽:感染症(風邪)によって起こるせき
    ・感染後咳嗽:菌やウイルスが死滅していて、風邪自体は治っているにも関わらず残るせき
    アレルギー咳嗽(アトピー咳嗽):何らかのアレルギー反応によるせき
    せきぜんそく:ヒューヒューやゼイゼイといった、呼吸困難を伴わないせき
    ・後鼻漏(こうびろう)症候群:鼻水が喉の奥に落ちることによって起こるせき
    ・逆流性食道炎:胃酸が逆流したことによって起こるせき
    ・慢性閉塞性肺疾患(COPD):主に喫煙習慣により生じる肺疾患、小児期ぜんそくがあった。
    そのほか、肺炎や肺がん、肺結核などの重病が隠れていることもあります。また、服用中の薬の副作用によるせきなども考えられます。

 

  1. 長引くせきは、どのように予防すればよいのでしょう?
    A. 上述したほとんどの病気には、それぞれの治療方法が確立しています。それぞれの予防方法は異なるのですが、共通していえるのは「喫煙習慣は諸害の元」ということです。肺がんやCOPDといった固有の病気はもちろん、炎症や感染を起こしやすいことも知られています。禁煙は、有効な予防・治療方法です。

 

咳喘息とは

風邪は治ったのに、咳がなかなか治まらない。先生にかかると風邪といわれて、咳止めを服用しても咳がなかなか改善しない。

そんな症状に心当たりがありませんか?
もしかしたらそれは、咳喘息かもしれません。

咳喘息は、一般の喘息と同様に気道が狭くなることで、呼吸時の刺激に過敏になり、炎症や咳が起こる病気です。

年々患者数は増加傾向にあり、特にアレルギーの方に多いとされています。

咳喘息の原因

咳喘息の症状が現れるきっかけとして以下のようなものが挙げられます。(成人)

  • 風邪などによる感染症
  • たばこの煙を吸う
  • 気温、湿度の変化(秋になり気温が低下するとせき込みあり)
  • 運動(特に寒い冬に多い印象です)
  • 飲酒
  • ストレス
  • ハウスダスト
  • アレルギーのある方

症 状

咳喘息になると、乾いた咳が1ヶ月以上続きます。軽い方は朝、夜に咳が出ます。

ただし、一般的な喘息と違い、「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった喘鳴や呼吸困難にはならず、初めは咳以外には気になる症状が出ないため、様子見で済ませている方が多いのが現状です。

また、咳喘息は自然に改善する傾向もあります。気管支喘息の前段階とも言われていますので、移行前に適切に治療することが大切です。

咳喘息の診断基準

  1. 喘鳴を伴わない咳が8週間以上続く(聴診器で聞いても呼吸にゼイゼイ、ヒューヒューという音が入らない)笑ったり、走ると咳が出ることがあります。
  2. 喘鳴、呼吸困難などを伴う喘息に今までにかかったことがない
  3. 8週間以内に上気道炎(かぜ)にかかっていない
  4. 気道が過敏になっている
  5. 気管支拡張薬が有効な場合
  6. 咳を引き起こすアレルギー物質などに反応して、咳が出る
  7. 胸部レントゲンで異常が見つからない

※上記の1、5の2つを満たすことで咳喘息と簡易診断をする場合もあります

治療

咳喘息はその特性上、風邪が長引いていると勘違いをされやすい病気です。

そのため、通常の風邪薬や抗生物質、咳止めを続けて服用される場合が多いのですが、咳喘息の場合はこれらのお薬では効果がありません。

咳喘息と診断された場合、吸入ステロイド薬や気管支を拡張させる薬を用いて気管支喘息へ移行を予防していきます。症状が軽減した場合でも、途中で治療を止めてしまうと再発する可能性がありますので、自己判断をせずに数ヶ月は治療を続けることが大切です。

成人の方でも、小児の方でも心あたりのある方は、お気軽にご相談ください。