急性喉頭蓋炎(成人)

今回は小児にはあまりなじみのない、成人の急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)について説明いたします。子供のクループ症候群と近い病気です

初めて聞く病名かもしれませんが(?)急性喉頭蓋炎は時として命にかかる病気です。

最初に埼玉医科大総合医療センター准教授(耳鼻咽喉科)の二藤隆春先生のお話から始めます。

【答える人】二藤隆春さん 埼玉医科大総合医療センター准教授(耳鼻咽喉科)

 67歳女性。この7年間で3回、急性喉頭(こうとう)蓋(がい)炎を発症して入院しました。深夜に突然のどが痛んで腫れ始め、翌朝にはつばをのみ込むのがやっとになりました。この病気は繰り返すものなのでしょうか。根本的な治療法や予防法があれば教えてください。(横浜市・N)

 Q どんな病気ですか

 A 空気の通り道である気管の入り口の蓋(ふた)である喉頭蓋(こうとうがい)が炎症をおこして腫れる症状がでます。つばものみ込めなくなるほどの強いのどの痛みが特徴です。喉頭蓋は、食べたり飲んだりしたものが気管や肺に入らないためのふたの役割をしています。腫れて気管が塞がれることで、呼吸ができなくなり、窒息して死に至ることもある怖い病気です。急激に悪化する場合があり、特に注意が必要です。

 Q 原因は何ですか。

 A 様々な細菌による感染が原因とされています。喉頭蓋は、のどの奥の方にあり、口を開けて見ただけではわからないため、のど風邪とされてしまうことがあります。診断には内視鏡で検査をする必要があります。いつもの風邪とは違う強い痛みを感じたら、耳鼻咽喉(いんこう)科か救急科を受診してください。

 Q どう治療しますか。

 A 抗生物質とステロイド剤を点滴します。食事をとるのが難しくなり、のどの様子を定期的にみる必要があるため、入院をお勧めします。数日から1週間ほどで腫れは抑えられます。窒息の恐れがある場合には、空気の通り道を作るために一時的に気管切開や気管挿管をします。

 Q 何度も再発しますか。

 A 一般的には、再発するとは言われていません。喉頭蓋まで広がったようなタイプでは、何度も繰り返すことがあります。急性喉頭蓋炎の根治法は確立されていません。 

急性喉頭炎(咽頭全体が腫れてのどが痛くなる、いわゆるのどの風邪ですね)

次に咽頭の内視鏡の写真をお見せいたします。図1は正常な咽頭です。

 図1:上の白い蓋が喉頭蓋です。 白は声帯です。

※図2…両側声帯が赤くなり、声帯の一部が白く炎症を起こしています。

注意:写真の上の方は舌の裏後方側です。

写真の下方は食道の入り口です。(少しわかりずらいですね)

上の図でわかりますが、この喉頭蓋は舌の後ろ側に位置しております。食事が気管に入らないように蓋をする役目があります。

急性喉頭炎とはのど(喉頭)の粘膜に生じる急性の炎症です。風邪ウイルスによるものが多いです。最初はウイルス感染だけでも、後々、細菌感染が生じることもしばしばあります。また、最初から細菌感染が起こることもあります。喉頭の中でも声を出す声帯に炎症がおきた状態を急性声帯炎と言います。

急性喉頭炎(きゅうせいこうとうえん)の症状(いわゆるのど風邪)

  1. 声がかすれる
    2. 声が出しずらい
    3. のどがヒリヒリしたり、違和感を感じる
    4. のどが痛い
    5. 痰がでる
    6. 咳が出る
    7. 発熱

注)1~7の症状が全て出現するという事ではありません。

急性喉頭炎の治療方法

(1)ウイルス感染だけと思われる時は、ウイルスへの特効薬はありませんので(インフルエンザウイルスは除きます)、のどの炎症を抑える薬を処方します。
(2)細菌感染を起こしているときは、抗生剤を処方します。
(3)ネブライザー療法
(4)十分な栄養補給、睡眠、安静が必要です。

治るまで通常1-3週間かかります。炎症が強い場合は1カ月近くかかる事もあります。

注意していただきたいこと

○声をあまり使わないようにする。
○喫煙者は禁煙をする。
○室内の乾燥をさけて、適切な湿度を保つ。

この風邪症状で終わることが多いのですが、さらに次に述べる急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)に進むことがあります。
○中には、呼吸困難をきたす急性喉頭蓋炎(※図2)や急性声門下喉頭炎(仮性クループ)の事もありますので、耳鼻咽喉科専門医を受診して下さい。確率は低いですが命にかかわる事があります。

内視鏡の写真です。気道の入り口をふさぎ窒息寸前の写真です。この検査処置は手術室で行っています。検査の刺激で窒息が起こることがありますので、気管確保できる手術室で行います。

正常な写真と比べて、明らかな違いが判ります。赤印が腫れている喉頭蓋です。

次に図3はさらに重症の窒息寸前のケイスです!

 

図;3内視鏡の写真です。腫れあが多喉頭蓋です。気道を塞ぎ窒息寸前です。

図:4喉頭蓋炎の模式図です。右に行くほど重症です。

図の上方が舌の後ろにある喉頭蓋で、図の下方に位置する披裂軟骨が食道の方向に位置する図です。

上方が首の前で、下方が首の真ん中で食道のそばです。(この図の説明は位置関係が難しいです)(^^)

おまけです。

急性喉頭蓋炎の症例

急性喉頭蓋炎の動画です。

https://youtu.be/f-iKuIN7x6E 

注意:(この内視鏡の映像は逆に映っています)図4とはさかさまになっております。腫れた喉頭蓋炎が画面下に来ております。最初の画像は舌の後ろが映っております。

成人の急性喉頭蓋炎は男性、喫煙者に多く感冒症状を前駆症状として発症します。前駆症状は通常は1,2日間急性喉頭炎の症状が続きますが、数時間で増悪する場合もあります。

特に糖尿病を有する患者では進行が早く、気道確保が必要になることが多いようです。症状としてはご存じのとおり、咽頭痛、嚥下痛などがありますが、約50%は早期には発熱がないため発熱がないからといって本疾患を否定することはできません。

昼の診察で、のどの風邪ですねと言われている方で、

  • 高熱
  • 呑み込みがつらい。
  • 息苦しい

⓷ 息するとき少しぜーぜーする

⓸ 特に糖尿病、喫煙者の成人はのどの風邪と言われていてこのような症状は夜間にひどくなります。至急救急病院に受診をすすめます。喉頭蓋炎の疑いがありますと言ってください。

耳鼻科の先生の内視鏡が診断に役立ちます。

成人のこのような症例が時々あります。お役に立ちましたら幸いです。