腸重積とロタワクチンについて

腸重積とロタワクチンについて

■ ロタワクチンと腸重積症の関係

 初回接種が生後12週6日より遅れて接種いたしますと、腸重積症が起きやすくなる可能性が示唆されています。ワクチン後の腸重積症は、接種後1週稲のは発生が報告されています。また、その半分は初回接種後に発生します。20,000~100,000人に一人の割合で腸重積症が認められる。

※本ワクチン接種後2週間以内に、反復する嘔吐と不機嫌、血便などが見られたら、12時間以内に医師を受診しましょう。

■ ロタワクチンの効果

① ロタウィルス胃腸炎の下痢予防効果は48%~68%の有効性があります。

② 重症ロタウィルス胃腸炎の予防効果が認められており、脱水により入院を減らし  た。

③ まれに起こるロタ感染症の合併症を減らす。

④ ロタ胃腸炎の重症例、死亡例、入院例の増加などを考えると予防効果のメリットの方が腸重積症の発症のリスクをはるかに上回るため、予防接種を定期化にすることになりました。

ロタワクチンの副反応

① 易刺激性(ぐずりなど) 7.3%

② 下痢 3.5%

③咳や鼻水 3.3% を認めました。

これらのことを充分にご理解いたして、まれに起こるリスクも考慮して接種されるようにお願いいたします。必ずしもワクチンと関係なく起る腸重積についてもご理解いただきましたら幸いです。

次に小児腸重積の説明をいたします。

■ 小児腸重積症

腸重積症は、腸の一部が別の部分の中にすべり込む病気です。はまり込んだ腸の一部は腸を閉塞させ、血流を遮断します。大腸に小腸がはまり込むタイプや(こちらが大部分)、小腸が小腸にはまり込むのがあります。

腸重積症の原因は分かっていませんが、乳幼児のロタワクチンが原因になることもあります。症状は突然発生する腹痛と嘔吐の発作などで、1時間に数回にわたり現れたり消えたりして、その後に血便がみられることもあります。

空気注腸を行うと診断を確定でき、治療にもなります。

手術が必要になることもあります。(発症から経過が長いとき)

■ 腸重積の症状

① 腹痛ないし不機嫌

② 血便(浣腸を含む)イチゴゼリー状の便

③ 腹部腫瘤ないし膨満(はまり込んだ腸が腫瘤となります。)

④ 嘔吐、顔面蒼白

⑤ ぐったりして不活発

➅ ショック状態

原因不明の不機嫌、急な泣きを含めて腹痛を考えると、腸重積症の初発症状は腹痛の頻度が最も高く、嘔吐を伴う頻度が高いです。時間の経過によりイチゴゼリー状の便がみられたり、発熱がみられたりする小児もいます。穿孔が起こっている小児はショック状態になります。腹部を触ると痛みがあります。腸重積がある腹部にソーセージ状の形をした腫瘤が発見されることがあります。

 乳幼児で不機嫌、嘔吐があれば必ず腸重積症を鑑別におくことが大事です。このような保護者の訴えを軽視してはいけないと言われています。血便は、イチゴジャム状の血便ですが、時間が経過しないと出現しないこともあります。浣腸で血便を確認することもあります。症状や診察の結果から腸重積症が疑われましたら診断に移ります。超音波検査で申打を確定できます。腸に塊があります。

■ 腸重積症の診断と治療

【診断方法】

 これが疑われたら、診断が胃腸炎と言われても、主治医に腸重積症の可能性は否定的なのか聞くくらいの勇気が大事です。診断が遅くなると手術になったりすることもある怖い病気です。

 腹痛に特徴があります。腹痛時、痛みを訴えられない子でも足を曲げて、足を「く」の字に曲げていて、痛みのため、顔面蒼白で、しばれくすると15分~20分すると痛みがおさまり、普通になりますが、時間経過とともに痛みの時間が短縮します。

 腹痛と嘔吐を主訴に来院した乳児の場合は、必ず本症を念頭におくべきです。しかし最初から腹痛、嘔吐、血便の3症状を伴うことは少ないです。

 多くの最初の腸重積症は、生後6カ月~1歳(まれに3歳くらいでも起こり得ます。)、女児よりも男児でわずかに多くみられます。

 治療は空気注腸を行います。

 空気注腸では、細かいチューブから小児の直腸に送り込んだ後、X線画像撮影します。通常は空気の圧力よって、はまり込んだ腸の一部が元の位置に押し戻されます。空気注腸がうまくいけば、病院での一晩過ごした後に小児は帰宅できます。腸重積症は1~2日間はときに再発しやすいため、再び症状が現れないか小児の様子をよく観察するように親は助言されます。超音波検査で腸重積症が確定された場合、空気注腸が行われます。

手術適応は次のときです。

① 腸穿孔の兆候が見られる。

②空気注腸を行っても腸重積がもとに戻らない時などです。

以上、ロタワクチンと腸重積の説明でした。不明な点は診察時間に聞いてください。