強いかゆみを伴い、炎症と湿疹が症状として見られるアトピー性皮膚炎ですが、近年研究が進み新薬が次々と開発されて注目を集めています。
アトピー性皮膚炎の症状から新薬まで説明させていただきました。
かなり専門的な説明も多く分かりにくいところもありますので、目次から必要な項目のみをお読みいただいても構いません。
※導入として、10.最近のマスコミの報道もご紹介しております。わかりにくい場合はこちらからどうぞ。
目次
アトピー性皮膚炎の症状の概要
アトピー性皮膚炎とは?
アレルギーが関与しており、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴い湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気のことです。
子どもの頃に発症することが多く、有病率としては小学校1年生で17%程度、中学生になると10%までさがり、重症度も低くなっていくことから全体的には成長と共にアトピー性皮膚炎は良くなると言われています。成人でも1~3%の人が罹患しているとされています。
明確な発症メカニズムは解明されていませんが、遺伝やアレルギーを起こしやすい体質などが発症に関与していると考えられており、花粉症などアレルギーによる病気を併発しやすいのも特徴です。
アトピー性皮膚炎の炎症
次の絵は皮膚の断面図です。図の左から正常皮膚、真ん中は軽症なアトピー性皮膚炎、右は症状が重症アトピー性皮膚炎です。皮膚の中にIL-4(インターロイキン)-4 ,IL-13などのサイトカインや免疫細胞がアレルギー炎症を悪化させております。多くのアトピー性皮膚炎は軽い皮膚炎が多く、見た目はきれいに見えますが、皮膚の内部はサイトカインIL-4,IL-13、IL-31などや、多くの免疫液細胞がアレルギー性の炎症をおこしております。アレルギー反応免疫反応が関与しているのは確実ですが、現在まだ不明な点も多くあります。Interleukin:インターロイキン:IL(※ サイトカインとインターロイキン(IL)の説明を参考にしてください。)
第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局」より引用
アトピー性皮膚炎の症状や兆候
多くのアトピー性皮膚炎は軽症ですが、ざらざらする皮膚を乾燥肌と診断して保湿剤を使用している例が多いです。(このような例も実は軽症のアレルギー性皮膚炎の可能性があり、保湿剤を使用しても改善しません)
乳児のアレルギーの湿疹の発症は少し特徴があります。初期は生後すぐに頭皮のカサカサから(脂漏湿疹)始まり、3~4カ月ごろになると、顔面のカサカサの湿疹があらわれます。離乳食始まりますと口回りの湿疹が出てきます(よだれかぶれ?)。さらに成長につれて肘の内側、膝の裏、足首の前、首のまわりに湿疹が出てくるようになります。(写真を載せています)それ以外の症状としては、赤ちゃんを抱っこしていると、お母さんの胸に顔をこすりつける動作が見られます。
このように軽症な例を含め、アトピー性皮膚炎の治療を重要視するのには理由があります。仮に治療を徹底しないまま放置すると、成長につれて食事アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎などが現れる可能性があります。現在のところ初期のアトピー性皮膚炎治療を早期にすると、その後出現するアレルギー症状の進行を抑えることが可能でないかという考えです。アレルギーの抗原感作は皮膚の炎症から始まります(皮膚感作)。当院のホームぺ―ジにアレルギーは皮膚炎から始まるを載せてあります。
アレルギーの症状は皮膚炎から始まり次第に鼻水、夜の咳など成長につれて他のアレルギー症状が出現するようになり、これらの連鎖を『アレルギーマーチ』と呼びます。
症状が現れる部位
乳児期のアトピー性皮膚炎の写真を載せます。
写真は主に軽症な例を載せますが、全身のアレルギー炎症を持つ例も掲載します。
頭部の症状 |
いわゆる脂漏湿疹と言われる湿疹です。この湿疹が出現してから生後3~4カ月ごろになりますと顔、首、顔面,両上肢がカサカサしてきます。カサカサしているため乾燥肌と診断されるケースが多いですが、私は特に注意が必要だと考えています。 |
手首の湿疹 |
手首のしわ部分が赤くなっています。 |
首の湿疹 |
同じくしわ部分が赤くなっています。 |
口の周辺 |
写真はありませんが、顔面以外も手足の皮膚がガサガサしておりました。 |
よだれによるかぶれにも見えます。 |
広範囲に赤くなっています。 |
耳の周辺(耳切れ) |
胸部 |
脚の関節部 |
体幹など |
全身 | |
全身に炎症がある乳児重症 | 1週間、ステロイドを適切に塗布して改善した例 |
幼少児期、思春期など、年齢により症状の出る部位がかわります。
幼少時には首や四肢の関節部分に、思春期以降になると頭や首、胸といった上半身で強くみられます。また、伝染性軟属腫(水イボ)なども出現します。
膝関節 |
肘関節 |
小児アトピー性皮膚炎の診断
これまでの皮膚湿疹の状況とアレルギーの家族歴などから、診断は可能性です。
アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)の発生が高い新生児(生後~3か月)は、新生児の湿疹がある時、両親または兄弟がAD、喘息アレルギー性鼻炎などのアレルギーを持つときは、新生児はアトピー性皮膚炎の可能性が高いと考えられます。
アトピー性皮膚炎は特徴的な皮疹であることから、見た目で診断をつけることができます。さらに、重症度を評価することが適切な治療をおこなうために大切です。体表のうちどのくらいの面積に皮疹がみられているのか、ただれて、滲出液がでているような重症な皮疹がどのくらいあるのかといったことを評価していきます。
世界的には、1994年発表された英国のU.K Working Party によるADの診断基準が広く使用されております。
必須事項 |
皮膚がかゆい状態である (または、児が引っかいたり擦ったりしていると親が報告) |
補足事項(以下のうち3つ以上を満たす) |
1. 今までに皮膚がかゆい状態が肘窩・膝窩・足関節・頸部周囲(10歳未満時の場合は浦頬部を含む)のどこかに出現した |
2. 喘息や花粉症の既往(4歳未満児では1親等以内にアレルギーの既往) |
3. この1年間で乾燥肌の既往 |
4. 屈曲部の湿疹(4歳未満児では頬部/前額部、四肢外側を含む) |
5. 2歳未満での発症(4歳児未満では適用しない) |
(英国)U.K Working Party によるADの診断基準
血液検査で、血清IgE値や末梢血好酸球数、血清TARC値が重症度を決める参考となります。アトピー性皮膚炎の診断のために食物抗原検索の血液検査は一般的ではありません。
血清TARCについて
アトピー性皮膚炎の重症度の参考になります。
血清TARC値は皮膚症状の変化の程度を短期間に反映します。アトピー性皮膚炎の皮膚症状が悪化すると上昇し、症状が良くなると減少するため、治療の効果判定やステロイドなどの外用薬をしっかり塗ることができているかなどのモニタリングに有用です。
SCCA2測定
小児アトピー性皮膚炎患者においてSCCA2値は、その重症度に応じて有意に上昇していることが報告されております。TARCと同様に小児アトピー性皮膚炎の重症度の指標として有用なマーカーです。
非特異的IgE定量(IgE-RIST)について
1型アレルギーの原因となるIgEの総量をみる検査です。喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などで高値となります。
小児アトピー性皮膚炎を早期に治療する意義
アトピー性皮膚炎を持つお子さまは、早期に皮膚炎の治療を受けることは次のような意義があると考えております。
皮膚のアレルギーを持つ乳児は成長につれて、鼻水が治りにくい、夜、早朝の咳、風邪により喘鳴、成長につれて喘息、さらに食事アレルルギーなどのアレルギー体質が原因と考えられる症状が出現することが多いです(アレルギーマーチ)。
最近の研究などによるとこれらの発症の予防には、早期に皮膚治療で予防できる可能性があることが解明されてきました。これなどの研究成果などより、乳児期より徹底的に皮膚の管理治療を行い、アレルギーマーチの予防および重症化の予防を考え、軽いアトピー性皮膚炎(いわゆる乾燥肌も)でも積極的に治療することがアレルギーマーチの進行の予防になる可能性を考えて皮膚の治療をすすめます。
食事アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係
アトピー性皮膚炎に食べ物(食物アレルゲン)が関与する場合が乳児はまれにあります。
歴史的には、過去小児科医を中心にアトピー性皮膚炎と食事の関連は研究されました。一時、乳児の血液アレルギー検査の結果より陽性例は積極的に除去食が押し進められました。最近の研究では積極的な除去食は否定されております。アトピー性皮膚炎に食事の関与は少ないと考えられております。
しかし、食事摂取により蕁麻疹の痒みによるひっかきによりアトピーが悪化することがあります。食物アレルギーの関与が明らか時以外は食事制限をおこないません。アトピー性皮膚炎と食事関与の診断は詳しい問診が重要です。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピーの治療の基本は適切なステロイド療法です。使用方法をアトピーの重症度により適切に、ある一定期間行いますと皮膚の炎症が著明に改善します。
軽症から、中程度のアトピー性皮膚炎は、しっかりと、たっぷりとステロイド患部に塗布すればアトピーの炎症はある程度炎症は改善して、痒みは減少します。一般的にはここでステロイド塗布を中止しますが、皮膚炎症の改善度を確認しながらステロイドのランクを下げたり塗布期間を短縮したりします。可能なら一週間前後に再度改善具合を確認して、ステロイド塗布間隔を変更します。
初診時にステロイド処方し使用方法、期限を保護者にお任せすることは致しません。(ステロイドの塗り方はここがポイントと考えます)更にステロイドは基本的には保湿剤で薄めて使用は行いません。
ある期間ステロイドを使用しても改善しない中程度、重症のアトピー性皮膚炎の方は新薬の生物製剤の注射薬、炎症を抑えるヤヌスキナーゼ製剤 Janus kinase (JAK)の経口薬を使用することもあります。
アトピー性皮膚炎は小児期にある程度炎症を抑えず、思春期まで持ち越し難治性となると、さらに長い期間と医療費皮膚を費やすことになります。夜間の痒みによる睡眠不足。外見を気にするなど心理面においても多くの負担がかかります。 さらに長期間まぶたに湿疹があると、目をたたいたり、こすったりしたために眼科的な合併症を引き起こす恐れがあります(網膜剥離により失明のリスク)。このような合併症は絶対避けるべきです。
今までの治療法はステロイド外用薬だけでしたが、改善が見込めないと積極的な治療をあきらめてしまう方もいらっしゃいました。今では新薬も開発され、治療法が多様になっています。新薬は高価な薬です。可能であれば、医療費助成保険を使用できる小児期に治療を開始して医療的な負担を軽減いたしましょう。
アトピー性皮膚炎の治療の歴史
アトピー性皮膚炎の治療はステロイド外用が基本です。
過去マスコミの間違った報道などにより、アトピー性皮膚炎のステロイド治療使用による副反応に対して強い拒否反応が起ました。(医師がステロイド治療を指導しないことも要因ですが)副反応への恐怖心からステロイドを一切使用しない脱ステロイド療法が一時もてはやされましたが、この治療法により一時期アトピー性皮膚炎の重症患者が増加しました。
その後にはステロイドの効果が見直され、徐々にステロイドが使用されるようになりました。今では副反応に対して恐怖心が多少薄れてまいりましたが、医療関係者でさえでもステロイド副反応に対しての考慮から、現在でもステロイドを薄めたり(減ステロイド療法)することも多いようです。この治療法では一時的に皮膚表面は改善したように見えますが、皮膚の内部の炎症は残っているのです。その結果改善せず長期の治療が必要になります。
ステロイド治療の治療効果確認のポイントは、臨床的炎症の強さに合わせて、適切な強さのステロイド選択を行います。治療のポイントは約1週間後に皮膚炎症の改善度、ステロイドの効果を確認することが大事です。
再診時に皮膚炎症改善度を確認した上で、
・ステロイドの強さのランクを継続する
・塗布期間を変更する
・ステロイドの強さのランクを下げる
と、どの治療法を続けるかを医師が判断します。
表面的には炎症が改善したように見えても、アレルギーの炎症は皮下に残っておることが多くあります。治療の継続かステロイドの中止は発疹が改善して、更に痒みの消失が重要と考えます。ツルツル肌が理想であり、ツルツルの維持が重要になるのです。
炎症部位は炎症の強さ体の部位によりステロイドをうまく使い分けなければいけません。次のステロイドの部位による部位別経皮吸収量とステロイド外用薬の強さを示した図です。ステロイドの強さを便宜上グーループ別に分けています。
1群が最大に強くさらに2群、3群、4群と強さが弱くなっていきます。
ステロイドの吸収率の説明
ステロド外用薬の部位別経皮吸収量:皮膚が薄い顔面、陰嚢など吸収率が高いです。
皮膚が厚い足裏はステロイドの吸収率が悪く、強めのステロイドを使用することもあります。皮膚の炎症の程度と部位によりステロイド剤の使い分けが必要です。経過によりステロイド軟膏を変えることもあります。
ステロイド外用療法:ステロイド剤は強さを4段階に分けます。※2024年現在。
赤字の×印の薬(非ステロイド系抗炎症剤)は現在副反応が出やすいので使用していません。
ステロイドは強さにより1群>2群>3群>4群と分けます。4群は弱いステロイドです。下方の非ステロイド軟膏軟のプロトピック(免疫抑制)、コレクチム(ヤヌスキナーゼ:JAK阻害剤)、モイゼルト(ホスホジエステラーゼPED4阻害剤)など最近の外用薬としてこちらがステロイドと、共に治療の主流になっています。
アトピー性皮膚炎のプロアクティブ外用療法
ステロイド外用薬を数回使用すると、見た目もきれいになり、かゆみもおさまってしまうことがあります。しかし実際、皮膚の中では、まだ炎症がくすぶっていることがあります。ここで薬を中断すると、また炎症がひどくなり、かゆみや湿疹が現れます。これをリアクティブ療法と呼びます。かつてはこの方法が主流でした。残念ながらこの治療方法は再発が多く、次のプロアクティブ療法が見直されました。
2015年5月に発刊された「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」では、見た目がきれいになり、かゆみがおさまってからも、一定の間隔をおいてしばらくはステロイド外用薬を使用する「プロアクティブ療法」(図1-2プロアクティブ療法)が推奨されています。新薬として開発された、プロトッピク軟膏も炎症が鎮静化した時期に使用されることがあり、ステロイド剤の外用薬使用以外も可能となりました。
皮膚の中の炎症がなくなるまでステロイド外用薬を適切に使い続けることで、最終的にステロイド外用薬をやめることを目標にした治療法です。
ステロイド外用薬をどのくらいの期間、どのくらい使用すればよいのか、医師の指示を守り、症状が繰り返すことがなくなるよう、根気よく治療を続けましょう。
外用薬の最近の考え方 まとめ
従来では症状が出た時に、ステロイドなどで治療し、表面上炎症がおさまったら中止し、保湿剤のみでコントロールするリアクティブ治療が推奨されていました。
しかし最近はいったん改善した皮膚の症状が再発する前に予防的に治療するプロアクティブ療法といわれる治療法が推奨されています。特に再発が多いアトピー性皮膚炎の場合、炎症を繰り返す部位の症状が落ち着いていても、炎症を抑えるお薬を中止せずに塗る量を減らしながら続けることで、しっかりと炎症を抑えることができるという治療法です。日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」アレルギー2021;70:1257-1342
ステロイドの使用方法
1FTU(fingertip unit)という単位を用いて軟膏やクリームを塗る量の目安とします。 これは人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量が約0.5gで、両方の手のひらに塗る量に相当します。(以下、日本皮膚科学会HP掲載)
実際はこの様に軟膏を使用しますと、小児には軟膏の量が少し多いような気がします。(重症例と軽症例のステロイド量の調整はしてもいいのではないかと思います。)
ステロイド外用薬の副作用
- 薬を塗った部分に毛が生える/増える
- にきび、おできができやすくなる/悪化する
- 毛細血管が目立ってくる
- 細菌・真菌・ウイルスによる感染症、ヘルペス性感染症
- 皮膚が薄くなる
- 皮膚が赤くなる
アトピー性皮膚炎治療薬開発の歴史
アトピー性皮膚炎新薬の機序と分類
分類は注射の生物学的製剤と外用、経口薬のJAK阻害剤と分けられます。
経口のJAK阻害剤は過剰な炎症を抑える作用があり、過剰な皮膚炎症を抑えること意味します。つまり過剰な免疫を抑えるとこにつながります。これらの経口JAK阻害剤の免疫力低下作用により、潜伏感染などが活性化されることが、特に高齢者、免疫低下の可能性があり,治療前投与前検査が必要です。
JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤という用語が頻繁に出てきますので、簡単に説明たします。少し専門的になりますが、サイトカインとインターロイキンの説明も必要です。
サイトカイン、インターロイキン(IL)とJAK 阻害薬を参照.
最近承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬(2024年4月現在)
最近承認されたアトピー性皮膚炎の治療薬 | ||||
一 般 名 | 表 品 名 | 分 類 | 投与方法 | 承認年 |
デュピルマブ | デピュクセント® | 生物学的製剤 | 皮下注射 | 2018年 |
ネモリズマブ | ミチーガ® | 2022年 | ||
ラロキヌマブ | アドトラーザ® | 2022年 | ||
デルゴシチニブ | コレクチム® | JAK阻害薬 | 外用剤 | 2020年 |
バリシチニブ | オルミエント® | 経口剤 | 2020年 | |
ウバダシチイニブ | リンヴォック® | 2021年 | ||
アブロシチニブ | サイバインコ® | 2021年 | ||
ジファミラスト | モイゼルト® | PDE4阻害剤 | 外用剤 | 2021年 |
※赤字の製品のみ説明します
アトピー性皮膚炎の治療と外用薬
これまでの重症アトピー性皮膚炎はコントロールが難しい疾患でしたが、注射・内服薬などの全身療法の登場により日常生活に支障がない状態に症状を抑えることができるようになってきました。治療の基本はステロイド外用ですが、最近2018年ごろより外用薬でも改善しない中程度以上の患者さんを対象に注射・内服薬が次々に発売認可されてきました。
多くの新薬がありますが、当院で使用する新薬についてのみ説明いたします。治療の使用年齢制限、重症度により制限されております。当院でまだ使用経験がない薬もあります。
おことわり:新薬により使用制限年齢があります。今後経過により年齢制限が変更されることもあります。あくまでも2024年5月現在の年齢制限です。
注意:新薬経口剤と注射薬は薬価格が高く設定されており、現在公費・負担のない方は、大きな負担がかかります。
デュピクセント(デュピルマブ®) 皮下注射
デュピクセントは2023年9月25日、生後6ヵ月以上の小児のアトピー性皮膚炎の適応が承認されました。
日本で初めて生後6ヶ月から全年齢のアトピー性皮膚炎に適応を有する生物学的製剤となります。
本薬剤が適応の場合は来院のご予約をとってからの投与開始となります。
※冷蔵した薬剤を45分以上かけて常温に戻す必要があるため、予約制です。注射はペンタイプとシリンジタイプがあります。
小児の薬剤費は補助になり家族の医療費負担はありませんが、東京都の医療証をお持ちであれば所得制限なく高校3年生まで医療費助成が受けられ自己負担額はありません。
例として高校3年生以上の方の治療費です。(詳細はそれぞれ条件があり年収に応じて負担が異なります。今後薬価が減る可能性もあります。)
<適用条件>生後6ヶ月から。ステロイドで治療しても改善が見込めない場合に使用します。
皮膚の状況がIGAスコア3以上。EASIスコア16以上。アトピー性皮膚炎病変の割合が全体の10%以上です(アトピー性皮膚炎の重症度計算のIGAスコア、EASIスコアは医師が計算します。)
・JAK阻害薬内服(リンヴォックなど)に比べて、免疫抑制などの副反応が少ない
・事前胸部レントゲンが不要など
患者さんに対してのメリットが大きいのも利点です。
POEM 検査(ご自身で記入可能です)
自覚症状の評価指標としてアトピー性皮膚炎の重症度を判断するPOEMスコアを採用しています。
当院にてPOEM の検査も可能です。治療経過により点数が改善することを確認できます。経過観察に主に使用されます。
B. ミチーガ(ネモリズマブ®) 皮下注射
2022年にミチーガ(ネモリズマブ®)が発売されました。かゆみにたいして効果がある生物学的製剤です。アトピー性皮膚炎は痒みが悪化の要因のひとつです。
ミチーガ60mg
<適用条件>13歳以上。皮膚状況がVAS 50以上。EASIスコア10以上。
(アトピー性皮膚炎の重症度計算のIGAスコア、EASIスコアは医師が計算します。)
(6歳以上は今後適用予定2024年4月現在)
<投与法>医院での皮下注射
アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとしたヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体である生物学的製剤です。アトピー性皮膚炎のかゆみにはIL-31が中心的な役割を果たすと考えられています。ミチーガはIL-31受容体(IL-31受容体)に作用する薬剤であり、既存治療で効果が不十分なアトピー性皮膚炎の特にかゆみ抑制効果が期待できます。アトピーの炎症は末梢神経に発現する(IL-31受容体)に作用することでかゆみを誘発します。ミチーガはこのIL-31RAに結合することにより、IL-31の結合を阻害し、それに続く細胞内への働きや伝達を阻害することでアトピー性皮膚炎のかゆみを抑制します。他にも好酸球、好塩基球、肥満細胞などの免疫細胞や角化細胞に作用して痒みを抑える作用のほかにも抗アレルギー作用も有しております。
C. リンヴォック(ウパダシチニブ®)経口剤
服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。
<適用条件>ステロイド外用剤の抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎の患者
<投与法>小児は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用します。炎症の程度により30mgが処方される場合もあります。
<アトピー性皮膚炎治療薬としての特性>
1日1回のアトピー性皮膚炎治療のための飲み薬です。服用開始早期からかゆみや湿疹といった自覚症状の改善が期待できます。小児は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用します。炎症の程度により30mgが処方される場合もあります。
リンヴォック投与開始後も皮膚炎症の状態に応じて抗炎症外用薬を併用していきます。
病的状態で過剰なサイトカインが分泌 サイトカインの放出を減らす
EASI 16以上。アトピー性皮膚炎病変の割合が全体の10%以上が投与の対象になります。
(アトピー性皮膚炎の重症度計算のIGAスコア、EASIスコアは医師が計算します。)
<投与法> 投与前に採血と胸部レントゲンを撮影します。問題なければ、内服を開始しますが、安全に使用するため定期的に採血と胸部レントゲンを行う必要があります。投与量は1日15㎎または30㎎です。30㎎は15歳以上で内服可。
<副作用>
上気道感染、結核、帯状疱疹、単純ヘルペスなどの感染症。ニキビ、胃腸障害、頭痛、血球減少、高脂血症、肝機能障害など。
この薬は成人、高齢者などのリュウマチなどにも使用されるために、多剤の免疫抑制剤の併用もあり使用基準が少し厳しくなっております。そのため検査を行わないとなりませんが、若年者には副作用は出ないようです。
D. デルゴシチニブ(コレクチム®)外用薬JAK阻害薬
コレクチム(一般名:デルゴシチニブ)は、「JAK阻害薬」に分類される薬剤です。 コレクチムは、ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1,JAK2,JAK3およびTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することで、各種サイトカイン刺激により誘発されるT細胞、B細胞、マスト細胞および単球の活性化を抑制してアトピー性皮膚炎の炎症をおさえます。
小児の場合は、0.25%製剤を1日2回患部に塗布します。ただし、症状に応じて0.5%製剤に変更することも可能です。
コレクチムは使用時の刺激感が生じにくく、その他の副作用も他剤に比べて少なめです。また、長期使用における安全性が臨床試験で確認されていること・生後6ヵ月から使用できます。
<副作用>使用部位の毛包炎や挫創(ニキビ)、刺激感、紅斑などがあります。
E. タクロリムス(プロトッピク®)
眼の周りに塗る場合は、眼に入らないように気を付けてください。
皮膚がジュクジュクしている部分は使用しないでください。
プロトピック軟膏は2種類あります。
1. 16歳以上が使用可能なプロトピック軟膏0.1%
2. 2歳以上が使用可能なプロトピック軟膏0.03%小児用
3. 顔や首は皮膚が薄いため、赤みが目立ちやすいです。
4. プロトピック軟膏はこのような症状は出ないため、顔や首によく使用され、体に使用するより効果が高いです。
5.プロトピック軟膏0.03%小児用は、ステロイドのマイルド(4群)~ストロングクラス(3群)と同等の効果(強さ)と推測されています。
強い炎症が出ている場合はステロイドで抑えてからプロトピック軟膏を使います。さもないと刺激感が強いです。
アトピーの炎症が強い時は、ステロイド軟膏で皮膚症状を安定させてからプロトピック軟膏を使うのが一般的な使い方です。
F.ジファミラスト(モイゼルト®)外用薬
大人は1%製剤を1日2回、患部に適量塗ります。 子どもは0.3%製剤を1日2回、症状によっては1%製剤を1日2回、患部に適量塗ります。
<使用量>
大人の両手のひらの広さに、1フィンガーチップユニット (FTU)くらい、塗布します。 1FTUとは、人差し指の先から第一関節までチューブから絞り出した量のことです。モイゼルト軟膏の場合、約2.5cm、約0.35gになります。
すり込むのではなく、軟膏をのせるように塗ることが大切です。 すり込むように塗ると、摩擦で患部が刺激され、炎症が増悪する原因になります。 患部を刺激しないように、ティッシュが皮膚にくっつく程度に塗りましょう。
•ホスホジエステラーゼ4(PDE4)※1阻害薬のジファミラスト軟膏はアトピー性皮膚炎の治療薬として2021年に承認されましたが、炎症を改善させる詳細なメカニズムはわかっていませんでした。
•研究グループは、マウスモデルを解析することで、ジファミラスト軟膏が希少な免疫細胞である好塩基球※2からのインターロイキン4(IL-4)※3産生を阻害することでアトピー性皮膚炎を改善していることを明らかにしました。
•ジファミラスト軟膏の作用機序の一端を解明した本研究は、臨床におけるジファミラスト軟膏の適用を考える上でも重要な知見です。
•ジファミラスト軟膏の標的細胞の一つに好塩基球が存在することが明らかになったことで、好塩基球を標的とした新規アトピー性治療戦略の開発へとつながることが期待されます。
東京医科歯科大学「 希少な免疫細胞の好塩基球がアトピー性皮膚炎治療薬の標的細胞であると判明 」【三宅健介 特任助教】より
モイゼルト軟膏はPDE4を選択的に阻害することで炎症性サイトカインなどの化学伝達物質の産生を抑制し抗炎症作用を発揮します。ステロイドの維持期に置き換えて使うことで、ステロイドの使用を減らせる可能性があると考えられます。
新薬使用時の検査
6.1 JAK阻害剤の投与に対する条件
次に、患者さま側としては、 ① アトピー性皮膚炎と診断されており、かつステロイド外用剤やプロトピック軟膏にて6ヶ月以上治療を行っている。(あるいは、副作用や過敏症のため、これらの外用療法が継続できない)という条件があります。 普通に考えると、この条件をクリアできていない患者さんは投与することはないと思います。
最後にちょっと大変な条件があります。 ② 皮膚の炎症が次の3つの項目を判定して、一定のスコア以上である必要があります。
○全身又は頭頸部のEASIスコア が16以上
○体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)が10%以上
これらのスコアは、医師が皮疹の状態を見て判定します。そのため、患者さんにはこのスコアの計算方法を気にして頂く必要はありませ ん。 条件付きは軽症のアトピー性皮膚炎には投与しないようにという、医療人に対する戒めだと思います。
JAK阻害剤を使う際に準備する検査 (JAK外用薬は適用外です)
服用前に血液検査、胸部レントゲン撮影など、他の製品に比べて手間がかかります。服用後も定期的に血液検査が必要とされております。
アトピー性皮膚炎の眼科合併症
鑑別診断
2.脂漏性皮膚炎:鼻唇溝など脂漏部位の皮疹の有無、体幹や四肢に湿疹病変や乾燥皮膚がみられるか(みられた場合はアトピー性皮膚炎の可能性が高い)を確認します。
3.単純性痒疹:痒疹以外の湿疹病変や乾燥皮膚の有無および経過、アトピー歴の有無などから診断します。
慢性単純性苔癬は,皮膚を繰り返し掻破ないし擦過することが原因で生じる慢性皮膚炎である。掻破や擦過により,さらにそう痒が生じることで,さらに掻破や擦過が増えるという悪循環(そう痒と掻破のサイクル)が形成されます。
慢性単純性苔癬は,皮膚を繰り返し掻破ないし擦過することが原因で生じる慢性皮膚炎である。掻破や擦過により,さらにそう痒が生じることで,さらに掻破や擦過が増えるという悪循環(そう痒と掻破のサイクル)が形成されます。
4.皮脂欠乏性湿疹:経過や皮疹の分布、性状などから鑑別します。
冬になると乾燥のため、皮膚がカサカサして痒くなり、白い粉が付着したような状態になることがあります。この状態を、「皮脂欠乏症」又は「乾皮症」と言います。
5.手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため):
手以外の部位の皮疹の有無や経過などから鑑別します。アトピー性皮膚炎の手の炎症と鑑別が難しいです。
6.おむつ皮膚炎:おむつ着用部位のみに生ずるため、他の部位に皮疹があるのであればアトピー性皮膚炎におむつ皮膚炎を併発していると考えます。尿や便が長時間触れて、おむつ自体の刺激、むれ、摩擦などが原因となって起こります。 尿や便が触れていた部分やおむつが触れていた部分が赤くなったり、ただれたりします。 おむつの交換回数を増やし、皮膚をこすらずやさしく清潔に保つことが大切ですし、やさしく洗ってあげましょう。
スキンケア
アトピー性皮膚炎におけるスキンケア
スキンケアとは、皮膚を清潔にして、積極的に保湿することで皮膚のバリア機能を保つケアのことです。
最近のマスコミの報道
皮膚に、かゆみを伴う湿疹が繰り返し起きる「アトピー性皮膚炎」。 その治療は、ステロイドなどの塗り薬が中心となっていますが、ここ数年、症状が比較的重い人向けの注射薬など、新しいタイプの薬が次々と開発されています。 今回は、選択肢が広がっているアトピー性皮膚炎の治療についてお伝えします。
注(分子標的薬は生物学的製剤とJAK阻害薬を意味します)
このアトピー性皮膚炎で、ここ数年で新たな治療薬が次々に出てきています。 アトピー性皮膚炎の代表的な薬として、長年使われているのがステロイドの塗り薬です。 皮膚の表面に塗って、炎症を抑え、かゆみを止めるものです。 ただ、長期的に使用すると、皮膚が薄くなるといった副作用も懸念されています。 また、十分な効果が得られないという患者も一部でいました。
【注射薬と飲み薬の仕組み】
ここからは、注射薬や飲み薬の分子標的薬について、ご説明していきます。 まずその仕組みです。
従来のステロイドの塗り薬は、皮膚の表面から成分が浸透して広く炎症を抑えるものですが、分子標的薬の注射薬や飲み薬は、体内から炎症を起こす原因分子を狙い撃ちします。 これによって、皮膚のより深くにある炎症への効果が期待されるなど、従来の薬で症状が十分に改善しなかった人の、新たな治療薬として注目されています。
40年近くアトピー性皮膚炎の治療に当たってきた江藤隆史医師は、 「多くの患者はステロイドなどの塗り薬を正しく用いることで改善できるが、症状が比較的重い人などは、塗り薬だけでは十分な効果が得られないケースもある。そうした患者の選択肢が増え、アトピー性皮膚炎の治療がさらに進歩した」と話しています。分子標的薬は生物的製剤と同じです。
分子標的薬の注射薬や飲み薬は、主に症状が比較的重い「中等症」や「重症」の患者が対象になります。 中等症以上の患者は、40代までのアトピー性皮膚炎の患者では、全体の2割から3割ほどに上ります。 学会などが定めた診療ガイドラインでは、こうした患者のうち、ステロイドなどの塗り薬で治療を行っても、十分な効果が得られなかった場合に、塗り薬と併用する形で、使用を検討するとしています。 分子標的薬には塗り薬もありますが、そちらはその限りではなく、初期から使用が可能な場合もあります。
次に対象年齢です。 小さな子どもには使用できない薬もありますが、徐々に対象が拡大しています。 例えば、アトピー性皮膚炎の分子標的薬として初めて登場した、「デュピルマブ」という注射薬は、これまで15歳以上しか使用できませんでしたが、今年2023年9月に、生後6か月以上の子どもにも認められました。
注意(治療経験が積み重ねられると対象年齢が低下されるようです)
ただ、この分子標的薬には、知っておくべき点、また注意すべき点もあります。 まずは価格です。 比較的、高いとも言われていまして、例えば注射薬ですと1回で数万円以上するなど、治療費が高額になる場合もあります。 一方で、公的な医療保険が適用されますますと、自己負担は最大でも3割となりますし、高額療養費制度を使って、さらに負担を軽減できる場合もあります。 そして副作用です。 ステロイドなどより軽減が期待されていますが、まったく無いわけではありません。 薬によっては、例えば結膜炎や感染症などが起きうり、ステロイドとは別の副作用が起きる可能性もありますので、その点は注意しなければなりません。 どの薬を使用するかは、あくまで専門の医師の判断が必要になります。
ここまで、アトピー性皮膚炎の治療の進歩についてお伝えしてきましたが、実は薬の治療以外にも、日常生活で実践すべき重要な対策があります。 というのも薬の治療はあくまで対症療法で、病気そのものを完全に治すわけではないとされているので、症状の悪化を防ぐためには、日常の生活でも気を付けるべき点があります。 これは、アトピー性皮膚炎と診断されている人だけでなく、湿疹が出来やすいなど、多くの人が、皮膚を守る上で有効ですので、是非、知っておいてください。
まず、その1つは「皮膚のバリア機能」を維持するという点です。 皮膚には、アレルギーの原因物質の侵入を防ぐ「バリア機能」がありますが、それが低下しますと、原因物質が侵入してかゆみが増してしまいます。 まずは、かゆみを感じても、皮膚を掻かないことです。 皮膚を掻くと、表面の細胞が壊れて、バリア機能が低下してしまいます。 専門の医師によると、かゆい時は冷たいタオルなどで冷やすと良いそうです。 また、「保湿」つまり皮膚のうるおいを保つことも重要とされています。 実はお風呂などで、肌をごしごしこすると保湿が低下するおそれがあります。 石鹸などを良く泡立ててから、やさしく洗うのが良いです。 さらに、皮膚の乾燥がひどい場合などは、保湿剤を使うことも有効とされています。
そして、もう1つ重要な対策は、症状を悪化させる因子を出来るだけ減らすことです。 ハウスダストやダニなどが、要因になることもありますので、部屋をこまめに掃除する。 あとは、ストレスも悪化の要因になりうるので、気をつけて下さい。 また、皮膚を出来るだけ刺激しないことも大切です。 髪が出来るだけ皮膚に当たらないよう、ヘアスタイルに気を付ける。 あるいは、刺激の多い、ちくちくするような衣類を避けることも勧められています。 さらには、アルコールや香辛料などの摂取を控えめにすることも大切とされています。
そして、アトピー性皮膚炎は、症状が一度良くなっても、再び悪化する可能性があります。 なので、自分の判断で治療を決して中断しないこと、そして日常での対策を続けていくことが極めて大切です。 治療の選択肢が増えていることにあわせて、そうした注意点も是非、多くの人に知っておいてもらいたいと思います。
2. サイトカインは、さらにインターロイキン(IL)、ケモカイン、インターフェロン、および腫瘍壊死因子(TNF)などに分けられます。
3. サイトカインは炎症誘発性サイトカインと抗炎症性サイトカインの両方があります。炎症誘発性サイトカインの活性化は細菌やウイルスが体内に侵入した際にそれらを撃退して体を守る作用があります。
炎症誘発性とは炎症反応を促進する動きを持つことで、抗炎症性は炎症を抑える作用)
4. 炎症誘発性サイトカインのインターロイキン(IL)は、IL-1、IL-2、IL-12、IL-17、IL-18、IL-4、IL-6、IL-30、などあります。炎症誘発サイトカインが過剰に活性化し、サイトカインが過剰に分泌されるとさまざまな病気につながります。
5. IL-4 ,IL-6,IL-30はアレルギー反応、炎症反応に関与しております。
6. IL-6 (インターロイキン-6)は多彩な生理活性を有するサイトカインで、免疫反応や炎症反応の調整において重要な役割を果たしています。
7. アトピー性皮膚炎では、過剰な「IL-4」、「IL-13」をはじめとするサイトカインが皮膚の炎症を引き起こし、皮膚のバリア機能低下やかゆみを誘発します。現在 インターロイキン(IL)の過剰な作用を抑える注射薬、飲み薬、外用薬と新薬が続々開発されております。
8. 次にサイトカインについて、少し説明いたします。過剰に作用した時のサイトカインストームと言うことばをお聞きしたことがあるともいます。コロナ感染症の重症例はサイトカインが過剰に反応して重症化すると言われております。
2. 点滴あるいは皮下注射で投与します。 バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。アトピー性皮膚炎以外にも、リュウマチなどの免疫疾患に多用されるようになっております。
3. 2018年にアトピー性皮膚炎治療薬として生物学的製剤に分類されるデュピクセント(デュピルマブ®)が発売されました。
サイトカイン(インターロイキン)が免疫細胞を刺激すると、細胞内で炎症をおこすようにされます。
この情報伝達を担う酵素(シグナル伝達)をJAK酵素呼びます。
過剰なサイトカインにより炎症をおこす反応をJAK(ジャック)阻害薬がJAKシグナル伝達を抑制することにより炎症を抑えることです。これによりアトピー性皮膚炎を改善する薬剤です。経口投与で服用します。
関節リュウマチの炎症の絵ですが、JAK阻害剤はリュウマチ性関節炎にも使用されます。
皮膚に炎症が起きる際、炎症反応の司令塔となる免疫細胞は、サイトカインという化学物質を分泌して、周りの細胞に「炎症を起こせ」と命令をくだします。命令を受ける側の細胞がこれを受け取ると、命令伝達は免疫細胞の内部へと変わります。細胞膜から細胞核へ向かい種々のシグナル伝達が起こるのですが、そのスタートを切るのがJAKという酵素です。JAKの活性化は、サイトカインを受け取り活性化した状態のサイトカイン受容体により誘導されます。