肘内障(ちゅうないしょう)

 小児肘内障(しょうにちゅうないしょう) 

■ 子供の手が急に動かない!
 それはひょっとすると肘内障(ちゅうないしょう)かも!

 最初まず肘関節の構造の理解が必要です。肘関節は肩関節側に上腕骨(じょうわんこつ)が一本あります。肘関節から手側の前腕骨(ぜんわんこつ)には、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)があり、こちらの骨は二本です。肘関節では二本の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)が輪状靱帯(りんじょうじんたい)というバンドで固定されています。

 肘内障は、強い力で引っ張られると肘の輪状靭帯(りんじょうじんたい)と橈骨頭(とうこつとう)が少しはずれかけて、亜脱臼(あだっきゅう)を起こしている状態のことです。手を引っ張ると図のように橈骨頭が輪状靱帯からはずれてしまいます。肘内障は子どもによく見られる怪我のひとつで、特に小学入学前までのお子さんに見ることが多いです。また、男女比でみると、女児にやや多い傾向があります。基本は、徒手整復術(としゅせいふくじゅつ)で治療します。治療後しばらくの間は再発しやすいため、手を引っ張ることはしないように注意が必要です。

■ 肘内障の原因
 小さい子どもの体は発達途中のため、肘の輪状靭帯と橈骨頭はしっかり固定されていません。そのため転ぶ、腕を強い力で引っ張られる、腕を掴んで何度も持ち上げるなど、ふとしたきっかけではずれてしますことがあります。また、なかには寝返りをきっかけに肘内障を起こすこともあります。成長に伴い骨格が完成するとこのような理由による亜脱臼は減りますが、骨折等と関連して肘内障を発症することもあります。

■ 肘内障の症状
 肘内障を起こすと関節に痛みを伴うため、泣き出す子どもが多いです。また肘内障を起こすと腕が動かせなくなるので、片腕がだらんと下がった状態になります。肘をやや曲げた状態でお腹の近くに腕を持ってくると痛みが軽減することがあるため、こうした姿勢を好んでとることもあります。
 痛みは肘に限局されるため肘を動かすのを嫌がりますが、その他の関節は問題なく動かせます。時間が経つと痛みは軽減しますが、関節や周辺組織の異常は残ったままなので患部を動かすのを嫌がるようになります。

 

 

 

 

 

 

 

■ 肘内障の検査と診断
 肘内障では特別な検査をすることはなく、問診上・身体所見などから診断します。しかし受傷後しばらく時間が経っても泣き続ける、肘が腫れる、手の感覚がない、手の指の変色があるなど、他の部位の骨折をより強く疑われる場合もあり、注意が必要です。

■ 肘内障の治療
 肘内障の治療は医師による徒手整復術が行われます。整復術では特に手術や全身麻酔などは不要で、診察室で数秒の短期間程度で終了することがほとんどです。