DPTワクチンとポリオワクチンの接種

2018年8月に日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールが改定となりました。

①就学前(5-6歳)の3種混合(DTP)ワクチンと不活化ポリオワクチン(IPV)の追加接種、

②学童期(11-12歳)のDTPワクチンの追加接種の2点です。

①3種混合(DTP)ワクチンに関して

 百日咳に対する抗体(免疫)が含まれる予防接種として、多くの人は0歳時に3種混合ワクチン(現在は4種混合ワクチン)を3回接種し、1歳時に追加接種し、合計4回接種をされております。その効果もあり、1歳台の抗体保有率は90%を超えております。従来この抗体保有は大人になるまで保持されるとされてきましたが、しかし予想外に4回目の接種終了後抗体保有率は減少し、5-6歳では30%以下になっていることが最近の研究で分かってきています。
5歳以降は再び抗体保有率が上昇していますが、これは知らない間の百日咳自然感染によるものと考えられています。

 近年、血液抗体検査でなく、簡単に鼻咽頭から検体で精度の高い遺伝子百日咳診断方が開発されました。これにより以前の血液検査抗体より百日咳の診断は容易になってきました。しかし症状が特徴的な乳児の百日咳患者とは違い、学童期・成人期の百日咳は普通の感冒症状と大差はないため、診断が困難であるため、‟長引く風邪“と判断されていることが多いのです。百日咳が流行してしまうと集団感染が起こり、しばしば地域的な流行が起こすとされています。地域の流行により、ワクチン未接種の乳幼児に感染してしまうことが、重症化が問題なります。実際、多くの先進国ではすでに百日咳含有ワクチンの接種が就学前・学童期に組み込まれています。(下記のスケジュールは米国のスケジュールです)

注意:TdapはDPTと同じです。

 日本での百日咳発生報告やワクチンの世界標準を考えると、DTPワクチンを追加接種したほうが良いとされています。しかし日本はその世界標準にはまだ追いついておらず、現在は3種混合ワクチンの追加接種は定期接種として接種できないため、DTPワクチンをご希望の場合は任意接種(自費)となっております。

②不活化ポリオワクチンについて
ポリオウイルスとは、急性灰白髄炎の原因となるウイルスで、重症な場合、手足の麻痺などの後遺症を引き起こすウイルスです。現在、ワクチンの普及により世界的にポリオ発生報告数は大幅に減少しています。

2014年アフガニスタンとアフリカの一部地域

 日本では従来「経口生ポリオワクチン(OPV)」が流通しておりましたが、2012年に副作用がでにくい、安全性の高い「不活化ポリオワクチンIPV」に切り替わりました。現在は4種混合ワクチン(DTP-IPV)に含まれ、多くの方が4回のIPVを接種されています。しかし不活化ポリオワクチンは、経口生ポリオワクチンよりも抗体保持が低い可能性があります。

 近年のポリオの自然発生報告はアフガニスタン・パキスタン・ナイジェリアで報告されているのみで、日本での報告はありません。しかし海外から持ち込まれる可能性はゼロではありません。ポリオウイルスの海外からの持ち込みリスクが考えられます。

 尚、①②を両方ご希望の場合、「4種混合ワクチン(DPT-IPV)を接種していけばよろしいのですが、日本では4種混合ワクチンは製剤規定として4回までの接種とされています(5-6歳に注射してよいとのデータがないのです)。そのため、3種混合ワクチン+不活化ポリオワクチンを2本での接種をお願いいたします。